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2025.4.1 -
「プレイ・デザート」を可視化する

雪ヶ谷・石川台―東京全域(調査範囲) 

助成:日本科学協会(笹川科学研究助成)

日本科学協会の笹川科学研究助成の2025年度の実践研究部門として、近隣保育園との対話をもとに途中草・代表の田村将理が提案した「<プレイ・デザート>を可視化する:園庭のない保育園の小公園利用の実態および制度的・設計的な課題の把握」案をご採択いただきました。この研究では雪ヶ谷・石川台の保育園に調査手法の構築やデータ検証にご協力いただき、東京全域に調査を展開します。


「一人で何人も見守る」業務保育の前提と法的根拠


モビリティの複合的低減とアクセス性による価値の反転(概念図)



「プレイ・デザート」(play desert: 遊びの砂漠)とは公園などのあそび場の不足を論じるために英語圏でときおり使われる表現です。日本の都市では少し歩けばすぐに小さな公園が見つかり、どの公園も一定以上の質できちんと維持管理されているように、優れた公園行政の尽力による公平性の高い環境が保たれています。それでは、日本にはプレイ・デザートが存在しないのでしょうか?
ここで社会から見えにくいプレイ・デザートに面しているのが「園庭のない保育園」です。待機児童問題の解消のため、平成13年の規制緩和で園庭の代わりに近隣の公園緑地の利用を前提に保育園が設置可能となり、子どもと保育士がまちに姿を現しました。子どもたちがまちと交わる機会の増加は保育と都市の新しい関係のはじまりであり、園庭がないことは必ずしも問題ではなく、むしろ社会全体で育むべき大きな可能性を秘めています。そして、子どもの集団と歩いて行ける範囲が限られる以上、少し遠くの魅力的な公園よりも、毎日行ける「どこにでもある小さな公園」こそがこの可能性を豊かにする拠点となります。
しかし、まちも公園も必ずしも保育のためだけにはつくられておらず、あちこちに潜む危険や懸念に適宜対処してきたのは保育士たちの不断の努力です。保育士ひとりひとりの高いスキルと責任感が危うい場面をつくりださないからこそ、都市環境側の不備は、一見穏やかな景色の裏に長らく潜んできました。さらに「一人で何人も見守る」という保育業務ならではの視点は子育て経験者からも想像しにくく、保育現場の負担と工夫は幾重にも隠されてきました。

本研究は、保育従事者の声を通じて潜在的なプレイ・デザートの課題とそれに人知れず対応してきたスキルを明らかにし、それらを公園専門家と検討します。そして、保育現場の負担を都市環境側から軽減しうる公園の制度・設計を、保育行政が標準環境に前提づける「どこにでもある小さな公園」の一般的要件としてまとめることで、地域保育の長期的な充実のための実践的提言をめざします。


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